社会福祉法人 草むら 風間美代子理事長に聞く

風間美代子さん
多摩マイライフ包括支援協議会の渥美京子です。 今回から、このブログで賛助会員のみなさまの活動をご紹介していきたいと思います。 第一回目は、私たちの協議会発足当時からの賛助会員である「認定NPO法人多摩草むらの会」の風間美代子さんにお話をうかがいました。風間さんはこの5月、「社会福祉法人草むら」を設立され、理事長に就任されました。その柱は「農福連携」「企業連携」「地域連携」を3つだそうです。活動の拠点となる「グリーンビレッジ」(八王子市南大沢)におじゃまして、社福設立の思いや今後の活動についてお話をうかがいました。
社福 草むらの本部、グリーンビレッジは京王線南大沢駅から徒歩で
 
緑豊かな「草むら」の中にあるグリーンビレッジ
渥美 草むらの会は1997年に発足し、心の病を持つ精神障がい者が安心して自立した生活ができるよう就労支援、自立生活支援、相談支援などの活動を展開されてきました。発足から22年目の今年5月、社会福祉法人を立ち上げられました。どのような思いから社福設立されたのですか。
風間 社福設立は長年の夢でした。今までも「超福祉」ということで作業所ではないものを創ろうとやってきました。作業所の工賃は安くて、自立して暮らすことができない。経済的になりたつ仕事のしくみ、工賃をあげる取り組みを模索してきました。でも、NPO法人では根本的解決につなげるには限界がある。その背景には、精神障がい者は「多問題家族」を生んでしまうということがあります。
渥美 多問題家族?
風間 家族のひとりが障がい者になることで、多問題が起きるのです。たとえば、両親が別居したり、離婚したり。兄弟が不仲になったり、ひどい時は亡くなったり・・・。「彼」「彼女」が病気になることでいろんな問題を生んでしまうんですね。ですから、「彼」「彼女」らの重荷をとるにはトータルな包括的支援、つまりソーシャルインクルージングがなければ、本当の意味の心の安らぎはないんだろうと思っていました。 「彼」「彼女」らには、自分だけ幸せになっていいのかな、という思いがあって、どんなに自立といっても、半分はいつも親のこと、兄弟のこと、家族のことを考えている。ですから、社福を作り、本当の意味での福祉をやりたい、と。社福は企業からの支援を受けやすい、信用度が違います。税制面も優遇されます。可能性が広がるからです。
渥美 今のお話の中で「自分だけ幸せになっていいのか」という言葉がありましたが、精神障がい者の方は、そう思っているのですか?
風間 そうです。「自分が原因で家族がこんなことになってしまった」「自分だけが恋愛したり、結婚したり、幸せになっていいのか」と悩むんです。「幸せになっていいのよ」といっても、彼らは勘がいいので、両親や兄弟姉妹の本音を感じ取ってします。高齢の両親は「(彼、彼女を)置いては死ねない」と思っています。子どもが引きこもりになったり、精神障がい者になったりしたことによる「親の心の闇」というのは消えないんです。
70歳、80歳の方から「子どもおいて死ねない」「死んだほうが楽」といった訴えを家族会でもよく聞きます。これまで(精神障がいをもつ)メンバーさんの23人の方が亡くなっています。亡くなったときに親御さんがいうのはだいたい「ほっとしました」です。「悲しいけれど、自分より先にいってくれて、ほっとした」と。特に親御さんが80歳を過ぎると危ない。「これ以上、親に負担をかけたくない」。で、先日あったような事件(親による子殺し)が起きかねない。それを何とかしたいと思い、「偏見」を外していきたい。
みなさんにわかってもらうには、信用ある団体が発信していく必要があります。社福は信用があります。より広く、社会にいろんな人を送り出すと共に、いろんな人にかかわってもらう。みてもらうことによって偏見がとれていく。偏見をなくし、誰もが生きやすい社会を創るためには、それしかないと思っています。
こうして私がお話する場をいただくことで、彼らがいえないこと、親がいえないことを言っていきたい。
社福を設立したことで、そのチャンスが広がると思っています。

渥美 社福を設立したことで、ソーシャルインクルージョンを実現していくということですね。具体的な取り組みについて教えてください。
風間 やろうとしているのは、プラットホームづくりです。
渥美 ここ南大沢のグリーンビレッジには、4つの機能があると伺っています。 ひとつは、精神障がいを中心とした障がい福祉サービス等の利用に関する相談窓口の「ふらっと訪夢」(特定相談支援)。二つ目は、一般就労を目ざす人たちが就労に必要な知識やスキル向上、就職活動のためのサポートを行う「シャル夢」(就労移行支援)。3つめは、弁当・和菓子・加工品の製造を行う「ぶるー夢」(就労継続支援B型)、そして4つめが障がいのみならず生活に困窮を感じている人の相談場となる「ぷらっと訪夢Ⅱ」(ソーシャルファームサロン)。プラットホームづくりの鍵を握るのが、4つめの「ぷらっと訪夢Ⅱ」ということですか。
風間 「ぷらっと訪夢Ⅱ」は行政がかかわっていません。補助金も入りません。子どもも、障がい者も、高齢者も、楽しく集まれる場所にしたい。特に、若年認知症の方の行き場ない。子どもだけでなく親御さんも。例えば子どもさんが1階でイベントに参加している間、3階で面談をしてお母さんのメンタルの相談を受けるなどできます。人と人とが集まり触れ合うことで、誰かの役に立つことができます。「ありがとう」の一言が人を支えます。例えば、お茶を入れて「ありがとう」と言われる。誰かの役に立つことは、人が集まることで生まれるのです。
行政は高齢者、障がい者、子どもと縦割りですが、ここには縦割りはありません。A型事業所でもB型事業所でもなく、障がい者に限定しないプラットホームがあると、働ける人がたくさんいらっしゃるんです。少子高齢化というけれど働き手はたくさんいます。高齢者、障がい者、ニート、生活困窮者など。その受け皿として、A型事業所、B型事業所、それから畑もその役割を果たしています。障がい者ではない高齢者がうちにきて働けるようにしたい。警備や清掃などの仕事を限定するのではなく、高齢者その人が得意とする仕事、たとえば経理や事務だったり。得意とする分野で1時間でも2時間でも働くことで、その人が生きがいを感じる。
年金だけでは厳しい。目標を見出してもらいたい。そして、高齢者やニート、生活困窮者が働くそばには、障がい者の彼らがいる。お互いに役に立つことができる。ゆえにソーシャルインクルージョンからソーシャルファームへ、なんです。より広くしたいなという思いがあります。草むらの会は、12の事業所をやっていますので、普通の就労移行支援ではなく、高齢者も、ニートも、障がい者受給者手帳がなくても、うちの移行支援事業所にきて、自分がどこで再生できるのか、飲食なのか、畑なのか、パソコンなのか。そこで試してもらいながら、やる気を感じてもらえるプラットホームです。
渥美 それがソーシャルファームサロン「ぷらっと訪夢Ⅱ」なんですね。
風間 特定相談支援事業所の「ぷらっと訪夢」は八王子の委託も受けています。これは障がい者を対象としています。プラスの部分として「ぷらっと訪夢Ⅱ」があります。ここは障がい者でなくても受け入れていきます。補助金はでないけれど、うちが今まで養ってきたノウハウや支援を利用してもらいたいという思いでやっています。これが一番、私が力を入れているところです。これがうまくいけば、国や都も「こういうところにも補助金をつけなければいけない」と前向きになると信じています。そこにいけば、すべてのことが解決するとならないと、底辺にたたずむ問題は解決しないからです。
 
渥美 運営の基盤は?
風間 お弁当とおまんじゅうと相談支援センターが運営資金となります。再来年には社福でグループホームとショートステイを作る計画があります。相談を受けてきた家族の方が資金をだして立ち上げる予定です。この建物と全体を維持していく方法を考えるとともに、将来的に絶対必要だと思う事業をやる。この2本立てで走り始めたところです。
渥美 思いとソロバンのバランスを取りながら、ここから始まるということですね
風間 まさに、そうです。

渥美 5月オープンから1ケ月。どんなことが始まっているのですか。
風間 医師や大学教授などがボランティアでかかわってくれています。クリニックではできないこと。大学にいたのではできないこと。例えば、明成の星山先生、八王子の佐々木先生(若年性認知症の権威)。若年性の会はあるけれど、大きな会ではできないこと、そこから漏れてしまう人。そこに入っていけない人をどうしようかと思っていらっしゃる先生。毎月第3木曜日に相談にきてくれます。
それから、緊急事態への対応。先日も南大阪警察から「預かってくれ」と電話がありました。グループホームに入ってもらいました。刑法に触れた方がどこにもいけない。未成年にもかかわらず、一般の刑務所に入れられてしまう。何十年も刑務所にいて、社会性も身に着けていない。刑期があけ社会に出ても働く場も住まいもない。これは人道的に許せないと思います。その人の人生、終わりですか? そういうことに賛同してくれる医師がいて「時間はかかるけれどやろうよ」と。まだまだ隠されていることがたくさんあります。
お母さんの大変さ、兄弟の大変さ、家に帰っても緊張感が走る。過去がフラッシュバックする。全然知らない土地で生きた方が楽なこともあります。
信じられないようなことがたくさんあります。やっても、やってもきりがない。でも、これが私の元気のもと。たくさんの支援者が協力してくださる。
渥美 さまざまな事件の背景をみると、地域のコミュニティが脆弱で、本人も家族も閉ざされた中に置かれ、追い詰められていく。構造は同じですね。
風間 親は外に言えない。地域の民生委員には話せない。なぜなら、兄弟姉妹がいるので話せない。その気持ちもわかる。ただ、隠していたら、ずっと続くので、隠している場合ではない。親が隠していたら、本人はもっとつらい。そこを超えて理解してもらう方法を一緒に考えていかない限り、いつまでたっても終わらない。
渥美 場があることに加え、仕事がある。そのしくみがここにある。
風間 はい、そうです。メンバーさんで入っても、準社員、社員になっていく人がいます。
渥美 メンバーさんというのは障がいをもった方のことですか。
風間 そうです。最初は受給者証を持ち、訓練生として入ってきます。それから、パソコンのインストラクターの訓練を受け、スキルをアップしていきます。インストラクターになった時には、パート社員になれる。最終的には正社員になり所長になる方もいます。そういう道があると、障がい者手帳が消える。それが彼らの夢なんです。手帳を返し、障がい者でなくなり、一般の職員と同じになることが。だから収益をあげることが大切です。障がい者者として登録すると、A型だったら一日7000円入りますが、障がい者ではなく社員になったら7000円は入ってきません。逆に雇用保険や社会保障がつきます。彼らにとっては幸せだけれど、うちにとっては負担。でも、それをやっていかないと彼ら幸せにはならないのです。
渥美 今、何人働いているのですか?
風間 スタッフは190人です。事業所に登録しているメンバーさんは500人。実際に通ってくるのは約半数です。
渥美 多摩センターのココリアにある事業所など多摩市内の事業所と社福草むらはそれぞれどのような機能を持ち、どう連携していくのですか。
風間 草むらホールディングと考えています。すべての事業所と連携して、取り組んでいきます
渥美 多摩マイライフ包括支援協議会に期待することを教えてください。
風間 マイライフ協議会はNPOから企業の方まで社会の第一線で活躍されている方で構成されています。様々な垣根を超え、近隣の人と手を組めるようなコーディネーター役になってくれるといいなと思っています。高齢者だけでなく、子どももニートも。生活困窮者とや弱者など。お金があっても幸せにはなれない弱者はいます。そういう方たちの相談にのれるようなコーディネートをしてくださることを期待しています。
渥美 課題は何ですか?
風間 売上をあげること。よい人材を採用していくことです。若くてやる気のある方を、求めています。志のある方。感性のある方、資格は関係ありません。経営に興味がある方、若くて独立してチャレンジしたい人もぜひ。
多摩マイライフ包括支援協議会のメンバー(鈴木さん、野城さん)と風間さんを囲んで
筆者(右端)